薬剤排出ポンプのサブユニットMexAの結晶構造解析とその意義


赤間 浩之1, 松浦 孝範2, 月原 冨武2, 中川 敦史2, 中江 太治1

1東海大学医学部
2大阪大学蛋白質研究所

PFシンポジウム (つくば, 2005.3.17-18)

緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)は病気や加齢などにより免疫力の低下した患者に感染し、時としてその生命を脅かす、いわゆる院内感染の起因菌のひとつである。緑膿菌の感染における問題点はこの菌が複数の抗生物質等薬剤に耐性を示すことにあるが、その多剤耐性の主たる原因は、この菌が薬剤排出ポンプを発現することにある。薬剤排出ポンプとは一旦菌体内に取り込まれた薬剤を菌体外へ排出する能動輸送体のことであり、これにより菌体内の薬剤濃度を低下させ、菌体に耐性を付与するものをいう。緑膿菌のそのような薬剤排出ボンプのうちMexAB-OprMは野生株でも低濃度で発現されており、これが緑膿菌の薬剤自然耐性の主たる原因となっている。また菌が薬剤に曝されることにより大量のMexAB-OprMポンプを発現し高度耐性を付与する。

薬剤排出ポンプの模式図

この排出ポンプは三種類のサブユニットからなっており、それぞれ内膜貫通型輸送体であるMexB, 外膜貫通型リポ蛋白質であるOprM及び内膜結合ペリプラズム蛋白質であるMexAから構成されている。MexBは基質薬剤を認識し、これを能動的にOprMへ搬送し、OprMは外膜を貫通することにより薬剤を細胞外に放出するダクトを形成しているものと考えられている。MexAはMexBおよびOprMが薬剤を搬送する際、これらで集合体を形成するのに必須な役割を持っているものと考えられている。

2004年4月に当研究室は大阪大学蛋白質研究所と共同で、この内膜結合蛋白質であるMexAの構造決定に成功した。Native結晶のデータはPhoton FactoryのBL6Aで収集し、3.5 Å分解能のデータを得た。また、Native結晶に酢酸ルテチウムをソーキングすることによって、重原子置換体を作製し、AR-NW12で重原子データを収集し、3.4 Å分解能のデータを得た。「重原子の異常分散効果のデータを用いた単一重原子同型置換 (SIR-AS) 法」で位相計算を行い、最終的には結晶化条件をさらに最適化して、2.40 Å分解能の構造を得た。

MexAの構造決定は、大腸菌の異物排出ポンプ (AcrAB-TolC) ホモログのコンポーネントAcrAの構造がまだ決定していないことから、いわゆる膜融合蛋白質ファミリー内では初の構造決定で、大きな進展と言える。これから、更なる詳細な解析によって、薬剤耐性菌に対する阻害剤の開発はもとより、複数の薬物認識機構の解明や膜を介した物質輸送現象の解明とその制御に広い応用が期待できる。



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松浦 孝範 (MATSUURA Takanori)
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